新たに障害者グループホーム(共同生活援助)を立ち上げたり、棟を増やしたりするとき、必ず行政の許可を得なければいけません。
ただ都市によっては、参入が非常に厳しい都市が存在します。言い方を悪くすれば、障害者福祉にお金を出したくない都市があります。総量規制により、これ以上の障害者グループホームの新設を認めてくれないのです。
そうはいっても、共同生活援助では棟数を増やさないと利益を確保できません。そこで、どのように考えて総量規制に向き合えばいいのか解説していきます。
もくじ
総量規制により、共同生活援助の開設が厳しくなる?
総量規制とは、文字通り「総量を規制する」ことを意味しており、障害者グループホームの数を一定数以下に抑えることを指します。
元々、金貸しで総量規制という言葉が使われており、年収の3分の1を超える貸付を禁止しています。それでは、障害者グループホームで金貸しのように明確な基準があるかというと、そうした法律は存在しません。つまり、総量規制に関する何かしら国からのルールがあるわけではないです。
ただ実際には、総量規制の概念を利用している自治体が存在するのは事実です。つまり、特定の都市で共同生活援助を開設したいと思っても、自治体判断によって開設許可が下りないのです。
実際に開設が厳しい都市は存在する
障害者福祉に対する態度は自治体によって大きく異なります。例えば横浜市や川崎市は非常に人口が多く、障害者グループホームの需要が高いです。しかし、横浜市や川崎市で共同生活援助を開設したいと考えても、行政からの許可が下りません。
要は横浜市や川崎市では、障害者グループホームの許可を下ろさないことにより、共同生活援助の数を絞っているのです。つまり、横浜市や川崎市は障害者に対して非常に冷たい都市といえます。総量規制として明確な基準はないものの、「ひとまず開設許可を突っぱねる」という対応をしている都市になります。
他には、東京(特に23区内)は人口が圧倒的に多いことで知られているものの、人口のわりに障害者グループホームの数が少ないです。東京23区についても、新規開設のハードルは高いです。
一方で千葉は障害者福祉に積極的であり、横浜市や川崎市、東京23区に比べると開設許可が下りやすいです。千葉については、総量規制の問題を考える必要は特にありません。
事実、東京都よりも千葉県のほうが障害者グループホーム(共同生活援助)の数は多いです。東京都のほうが人口は圧倒的に大きいにも関わらず、千葉県のほうが障害者グループホーム数が多いのです。これは、東京では共同生活援助の開設難易度が高い一方、千葉ではゆるめになっているからです。
なぜ総量規制を行うのか?
それでは、なぜ行政は総量規制を行うのでしょうか。理由は2つあり、「お金(税金)を出したくない」「軽度の施設は既にたくさんある」があります。
・障害者に冷たい都市はお金(税金)を出したくない
横浜市や川崎市の場合、障害者グループホームの開設自体が厳しいです。障害者福祉は補助金ビジネスであり、障害者グループホームの数が多いほど、たくさんの税金が使われます。そのため、障害者施設の許可を下ろさないようにして数を制限し、障害者へ税金を使わないようにするのです。
障害者福祉にお金を使いたくない都市の場合、たとえ人口が多く、障害者福祉に対する需要が大きかったとしても開設許可が下りません。
・軽度向けなど、特定施設の開設が厳しい
また、東京都を含めて総量規制のある都市では、軽度向けの施設を制限しているケースがよくあります。例えば、「軽度向けの介護サービス包括型は開設許可が下りないものの、重度向けがメインとなる日中支援型グループホームは許可が下りる」などです。
実際のところ、障害者グループホームは軽度・中等度向けの介護サービス包括型がほとんどです。また事業所としても、いきなり重度の障害者を受け入れるのは現実的ではありません。そのため、介護サービス包括型からスタートするのです。
ただ自治体としては、重度の障害者の受け入れ先を求めているケースが多いです。重度障害者は受け入れ施設が圧倒的に不足しており、重度では入居先が非常に少ないです。そのため軽度向けの障害者を受け入れる施設を制限し、重度向けの施設に対して許可を出すケースはよくあります。
または、「精神障害者の受け入れ施設では許可がほとんど下りないものの、知的障害者の受け入れ施設であれば介護サービス包括型であっても許可が下りる」という都市もあります。
自治体によって判断が異なり、総量規制の内容も変化します。そのため新たに障害者グループホームの立ち上げや棟数拡大を考えるとき、開業が可能かどうか行政との調節が必要です。
障害者福祉に積極的な都市が開業や棟の新設で重要
こうした総量規制の事実を理解して障害者グループホームを運営しなければいけません。特定の都市では厳しい総量規制が存在します。一方、障害者福祉に手厚く、総量規制がほぼ存在しない都市もあります。
そうしたとき、既に障害者グループホームを開設しているかどうかに関係なく、障害者福祉に手厚い都市を見据えると経営が安定しやすいです。
実際のところ、一棟目(定員4~6人)ほどでは満床近くになっても赤字になりやすいです。そのため複数の棟を出していくことで、固定費(人件費)よりも大きな売り上げを出すように意識しなければいけません。
もちろん、横浜など難しい地域に敢えて挑戦してもいいです。この場合、障害者グループホームの数は少ないものの、人口は非常に多いため、満床にするための労力は少なくなります。
重度向けの施設に挑戦してもいい
または、最初は軽度・中等度向けの障害者グループホームを運営するものの、どこかの段階で重度向けの障害者グループホームをメインに挑戦してもいいです。
- 日中支援型グループホーム
- 他害ありでも受け入れ可
- 最重度の難病も受け入れ可
こうした重度向けの障害者施設は数が少なく、非常に貴重です。そのため、行政からの許可も下りやすいです。受け入れ側としては大変になりやすいものの、施設数が少ないため、総量規制の対象になりにくいというわけです。
都市によって共同生活援助の総量規制がある
都市によっては、一定数以上の障害者グループホームの数が制限されています。要は、障害者福祉に冷たい都市があります。代表例は横浜市や川崎市であり、新たに共同生活援助を立ち上げるときのハードルが非常に高いです。
また東京23区についても開設のハードルは高くなりやすいです。ただ、総量規制のある都市であっても「重度向けの施設は開設できる」「知的障害者向けは許可が下りる」など、特定の条件を満たせば開設できる場合もあります。
そのため、障害者グループホームの開設を考えるとき、「障害者福祉の支援へ積極的な都市を選ぶかどうか」は重要です。総量規制により、開設許可がほぼ下りない都市を選ぶと、スタートラインにすら立てない可能性が高いです。
共同生活援助の運営は補助金ビジネスである以上、新たな棟を作るときは行政からの許可が必須です。そこで、障害者グループホームで起こる総量規制の問題を事前に理解しましょう。