生活保護の受給者が主に利用する施設が保護施設であり、授産施設は保護施設の一つです。こうした授産施設を利用することで、利用者は仕事を通してスキルアップを図れます。障害者やホームレスを含め、生活困難者が授産施設を活用します。
なお障害者に対して働く機会を与える施設として就労支援施設があります。授産施設と就労支援施設は異なり、使い分けなければいけません。
それでは、生活保護での授産施設とは何なのでしょうか。生活保護で授産施設を利用するときの内容について解説していきます。
もくじ
生活保護法での授産施設とは
保護施設には種類があり、保護施設の一つが授産施設です。それぞれの保護施設について、以下のようになっています。
- 救護施設:障害者に住居と生活扶助を与える
- 更生施設:障害者の独り立ちを目指す
- 授産施設:就労や技能の訓練を行う
このように保護施設によって目的が異なり、その中でも授産施設は「生活保護受給者が働く」ことを重視しています。
生活保護の障害者であっても、働くことで賃金を得るのは普通です。一般企業で働くのは難しいものの、授産施設などの就労をメインに賃金を得たい場合、入所または通所にて授産施設を活用しましょう。
・社会事業授産施設もある
ちなみに、授産施設には生活保護法に基づく授産施設だけでなく、社会福祉法を基にする授産施設もあります。これを社会事業授産施設といいます。
社会事業授産施設についても、生活保護の授産施設と同様に、労働力が低く生活に困窮している人が利用対象者です。どちらも生活困窮者に対して技能の習得を行わせ、社会復帰を促すのが目的であるため、大きな違いはありません。
障害者の割合や種類はどうか?
知的障害者や精神障害者、身体障害者であったり、ホームレスであったり、生活をするうえで問題を抱えている生活保護の人が保護施設を利用します。なお厚生労働省の資料では、授産施設の利用者のうち障害者の割合は37.1%です。
救護施設や更生施設など、その他の保護施設に比べると、授産施設では障害者の利用割合が低いです。それでは、どのような障害者が授産施設を利用しているかというと以下のようになります(重複回答あり)。
障害の種類 | 割合 |
身体障害 | 20.8% |
知的障害 | 34.7% |
精神障害 | 43.0% |
発達障害 | 4.1% |
※厚生労働省:保護施設の支援機能の実態把握と課題分析に関する調査研究事業
発達障害も精神障害者になりますが、多くの精神障害者が授産施設を利用しています。なお施設内で働く必要があるため、重度の障害者ではなく、軽度または中等度の障害者が授産施設を活用します。
日中作業で軽作業を行い、工賃を得る
それでは、実際に授産施設を利用するときは平日にどのような日中活動を行うのでしょうか。健常者も障害者も利用する授産施設ですが、以下のような軽作業になります。
- 箱折り、菓子詰め
- お菓子・パンの製造
- パッケージのシール貼り
- 小物づくり
- 清掃
- 接客
- パソコン作業・データ入力
こうした作業訓練を通して工賃を得ることができます。なお、雇用契約なしで行う作業訓練であるため、工賃を得るとはいっても、最低賃金は適用されません。例えば、時給200円などでの工賃になります。
就労支援施設である作業所(就労継続支援A型・B型)との違い
授産施設を利用して働くとなると、障害者向けの就労支援施設との違いが気になります。障害者向けの就労支援施設・障害福祉サービスとしては以下が知られています。
・就労移行支援
障害者雇用を含め、障害者の一般企業への就職を支援します。2年という期間内に企業就職に向けたトレーニングを行い、企業求人(アルバイト・契約社員を含む)へ応募して社会復帰を目指します。
・就労継続支援A型
雇用契約を結び、最低賃金が守られた状態で仕事をする障害福祉サービスです。雇用契約を結ぶため、毎日、決まった時間に出向いて仕事をする必要があります。
・就労継続支援B型
雇用契約なしに働く障害福祉サービスです。雇用契約がないので働く時間は自由だし、体調が悪ければ休めるものの、最低賃金は守られません。
なお、就労継続支援A型や就労継続支援B型は作業所とも呼ばれています。
・授産施設とは根拠となる法律が異なる
このとき、生活保護法を根拠とする施設が授産施設です。障害者に関する法律が元になっているわけではないため、障害者だけでなく健常者が授産施設を利用することもあります。
それに対して、障害者総合支援法を元にして就労支援施設が就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型などのサービスを提供します。そのため障害者のみが利用するサービスであり、健常者は利用できません。
授産施設での作業訓練と比較すると、雇用契約なしに低い時給で働くという点で、授産施設は就労継続支援B型と似ています。どちらも軽作業がメインになり、低い時給にて工賃を得るからです。
就労継続支援A型は短時間労働になるものの、雇用契約を結ぶので最低賃金は守られます。一方で授産施設や就労継続支援B型の場合、前述の通り雇用契約なしにて働くことになります。
福祉工場や共同作業所(小規模作業所)との違い
なお昔の名残が名称に残っているケースもあります。例えば、以前の制度として福祉工場や共同作業所(小規模作業所)があります。ただ現在、福祉工場や共同作業所(小規模作業所)は以下のようになっています。
- 福祉工場:就労継続支援A型へ変更
- 共同作業所(小規模作業所):就労継続支援B型へ変更
福祉工場や共同作業所(小規模作業所)というのは、要は「就労支援施設が提供する就労サービス」を指します。障害者が利用するサービスであるため、授産施設とは大きく異なります。
授産施設を活用し、工賃を得る
生活保護の人がメインで利用する施設が授産施設です。なお授産施設には、生活保護とは関係ない社会事業授産施設もあります。両方とも生活困窮者を利用対象者にしており、大きな違いはありません。
こうした授産施設では、施設内で利用者が就労します。雇用契約を結ぶわけではないため最低賃金は守られず、工賃は低いです。ただ、一般企業で働けない障害者であっても授産施設を利用し、お金を得ることができます。
それに対して、就労支援施設が提供するサービスとして就労移行支援や就労継続支援A型・B型があります。これらは障害福祉サービスであり、障害者のみが利用できます。そのため、障害者以外でも利用できる授産施設とは異なります。
授産施設を利用するとき、どのような施設なのか理解しなければいけません。特に障害福祉サービスとの違いを学ぶのは重要です。そこで、授産施設と作業所(就労継続支援A型・B型)の違いを把握して公的施設を活用しましょう。
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