知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者であれば障害福祉サービスを利用することになります。ただこうした障害者が65歳以上になると、65歳の壁を生じるようになります。
具体的には、65歳以上になると負担額が大きく上昇します。障害者の場合、高齢になっても障害者のままであるものの、負担だけ増えるのです。そこで、この問題を解決する給付制度として新高額障害福祉サービス等給付費があります。
条件を満たしていれば、新高額障害福祉サービス等給付費へ申請することでお金を補助してもらえます。そのため、対象者は全員が利用しなければいけません。
それでは、新高額障害福祉サービス等給付費の具体的な内容はどのようになっているのでしょうか。新高額障害福祉サービス等給付費の内容を解説していきます。
もくじ
障害福祉サービスの65歳問題と介護保険
18歳以上になると障害福祉サービスを利用できます。ただ65歳以上では介護保険が優先されます。そのため、65歳になると障害福祉サービスではなく介護保険サービスへ自動的に切り替わります。
ただ、そうなると不都合な人が出てきます。障害者は多くの場合、低所得者です。そのため実家ではなく、一人で暮らしている場合はほとんどのケースで住民税の非課税世帯となります(または生活保護)。こうした人の場合、以下のように障害福祉サービスの月の負担は0円です。
ただ前述の通り、65歳になると障害福祉サービスではなく介護保険サービスへと切り替わります。この場合、負担は0円ではなく1割負担になります。つまり、高齢になると自動的に負担額が増えるのです。
住民税の非課税世帯のため、それまで無料だったにも関わらず、介護保険サービスへの切り替えによって月15,000~20,000円ほど負担額が増えるのは普通です。そのため、多くの障害者で生活が厳しくなるのです。
新高額障害福祉サービス等給付費で補助してもらえる
この問題を解決するために作られた制度が新高額障害福祉サービス等給付費です。特定の条件を満たすことにより、「介護保険サービスへの移行によって生じた負担額」について給付されます。
つまり、それまで住民税の非課税世帯や生活保護などによって負担がゼロの場合、65歳以上になっても無料の状態が継続されるというわけです。
65歳など障害者で高齢の場合、軽度の人を除き多くのケースで自宅や施設を利用して格安にて生活しています。自宅や施設であれば、家賃や食費、水道光熱費などすべてを含めても支出は月6万円ほどに収まるのは普通です。
そのため年金だけで問題なく生活できていたわけですが、新高額障害福祉サービス等給付費によってこうした生活は守られるというわけです。
対象者はだれ?わかりやすく解説
ただ、65歳以上のすべての障害者で新高額障害福祉サービス等給付費を利用できるわけではありません。新高額障害福祉サービス等給付費を利用するには条件があり、以下のすべてに当てはまる人が対象者です。
- 65歳になる前の5年間、障害福祉サービスを利用している
- 生活保護受給者または住民税の非課税世帯
- 障害支援区分が2以上
- 65歳までに介護保険サービスを利用していない
厚生労働省の資料にはより細かく記載されていますが、要は上記の条件を満たしていればいいです。生活保護または低所得者であれば、ほぼすべての人が条件を満たしているため、要件は高くありません。
区分2以上の障害者が65歳の前まで精力的に働いているケースはほとんどありません。そのため、ほぼ条件に当てはまるというわけです。
また新高額障害福祉サービス等給付費の対象になるのは、介護保険サービスと内容が重なる居宅介護、重度訪問介護、生活介護、短期入所になります。
例えば障害者グループホームについては介護保険サービスに存在せず、障害福祉サービス独自の内容です。そのため65歳以上になっても、障害者グループホームの場合は介護保険サービスとは関係がなく、障害福祉サービスが継続されるので新高額障害福祉サービス等給付費を利用しなくても無料となります。
申請書を提出すれば、あとは自動更新となる
それでは、申請のためにどのような書類を提出すればいいのでしょうか。手続きをするためには、以下の書類を役所へ提出することになります。
- 申請書(自治体に存在する)
- マイナンバーの確認資料
- 委任状(本人以外が手続きする場合)
申請書は自治体によって書式が異なるため、詳細については役所で聞くといいです。なおマイナンバーカードがない場合、マイナンバー(個人番号)が記載されている住民票を取得する方法でも問題ありません。
なお、一度申請をして受理されれば後は自動更新となります。毎年、作業をしなければいけないわけではないため、65歳の問題を解決するため必ず手続きをしなければいけません。
・支給を受ける権利は5年で時効
なお新高額障害福祉サービス等給付費の支給を受ける権利については、5年で時効を迎えます(地方自治法第236条第1項)。そのため、障害者は65歳を過ぎたことによって忘れずに申請する必要があります。
利用期間や課税世帯になったときの問題
それでは、特殊な事情のある人は新高額障害福祉サービス等給付費を利用できないのでしょうか。例えば63歳に長期入院となり、障害福祉サービスを利用していなかった場合、65歳以上になったときに要件を満たさないのでしょうか。
これについて、長期入院など「やむを得ない事情がある場合」は例外的に新高額障害福祉サービス等給付費を申請できます。障害者で一時的に入院が必要になるのは普通であり、新高額障害福祉サービス等給付費受給のために入院を我慢する必要はありません。
例えば60~63歳の4年間、生活介護を利用していたとします。ただ64歳のとき、入院のために生活介護を受けていない場合、これについては「やむを得ない」と考え、新高額障害福祉サービス等給付費の申請が可能です。
また場合によっては、「65歳の前は住民税の非課税世帯だったが、65歳の後に課税世帯になった」という人がいるかもしれません。この場合、住民税の課税世帯だと新高額障害福祉サービス等給付費へ申し込みできません。ただ、再び非課税世帯になれば申し込みできます。
参考までに、65歳になる前まで住民税の課税世帯だった場合、新高額障害福祉サービス等給付費の対象者ではありません。この場合、その後に住民税の非課税世帯になったとしても新高額障害福祉サービス等給付費の対象外です。
生活保護の場合は利用しなくてもいい
なお生活保護受給者の場合、介護保険サービスが無料になります。そのため低所得者(住民税の非課税世帯)とは異なり、65歳以上になることで負担が大きく増えるわけではありません。
厳密には、生活保護であっても介護保険サービスを利用するときは1割負担です。ただ負担したお金は介護扶助から支払われるため、実質的に無料というわけです。
生活保護だと元々が無料であるため、65歳による負担増を心配しなくてもいいです。つまり、新高額障害福祉サービス等給付費を申請しなくても問題ありません。
また低所得者で貯金が少なくなっているとしても、最終的には生活保護という選択肢があるため、障害者が高齢になったからといって生活できなくなることはありません。
なお教科書的には、介護保険の介護扶助よりも新高額障害福祉サービス等給付費が優先されます。そのため生活保護受給者は新高額障害福祉サービス等給付費を申請する必要があるものの、実際のところ無料であることには変わらないのでわざわざ申請する人は少ないです。
給付制度を利用して障害者の65歳問題を解決する
65歳以上の高齢障害者というのは、その後もずっと障害者であることを意味しています。こうした知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者のすべてで直面する問題が65歳の壁です。65歳になることで障害福祉サービスの無料がなくなり、1割負担となるのです。
ただ65歳以上の障害者はほぼ一人暮らしです。また多くの人が低所得者であるため、住民税の非課税世帯に該当します。この場合、新高額障害福祉サービス等給付費を利用することで補助されます。
生活保護では介護扶助により、元から介護保険サービスが無料です。そのため利用する意味はありませんが、住民税の非課税世帯にとって非常に重要な補助制度が新高額障害福祉サービス等給付費です。
多くの障害者にとって問題となる65歳の壁ですが、給付金制度を利用すれば解決できます。ただ申請しなければ補助されないため、時効を迎える前に忘れずに申請しましょう。
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