ケガや病気によって働けなくなるとき、傷病手当金を受給できます。こうした病気としては精神疾患も含まれており、メンタル不調’(うつ病、統合失調症、パニック障害など)であっても傷病手当金によって高額な給付金を得られるようになります。
なお、メンタル不調で傷病手当金を受け取るとき、事前に理解するべき点があります。例えば退職後の継続給付や再発時の受け取りは重要です。
それでは、精神疾患での傷病手当金の受給で何を考えればいいのでしょうか。精神障害者での傷病手当金の利用について解説していきます。
もくじ
うつ病や統合失調症、パニック障害と給付金の対象
精神疾患の種類は多く、うつ病や統合失調症、パニック障害などがあります。こうした精神疾患を発症してしまい、十分に働けなくなったのであれば、傷病手当金の対象になります。
仕事とは関係ないプライベートでケガや病気を発症した場合、傷病手当金の支給対象になります。実際には「仕事のストレスで統合失調症やパニック障害を発症した」であっても、仕事との因果関係を証明するのは困難であり、傷病手当金が利用されるというわけです。
・社会保険への加入が条件
このとき、傷病手当金を利用できる条件は社会保険への加入です。そのため会社員・公務員だけでなく、アルバイトや派遣であっても社会保険の加入者は傷病手当金を利用できます。
症状が重くても病院の受診は必須
なお精神障害者の場合、病院の受診が困難になりやすいです。うつ病や統合失調症、パニック障害を含めて、一人の力で受診は困難です。ただ、そうした状況であっても早めに病院・クリニックを受診することで初診日を作らなければいけません。
傷病手当金を利用するとき、社会保険に加入していることに加えて、「連続3日以上の休み」を作る必要があります。
ただ、傷病手当金の申請では必ず医師の証明が必要です。そうしたとき、病院・クリニックを受診した日よりも前の内容を医師は証明できません。そのため3日以上の連続した休みを作るにしても、初めに医療機関を受診する必要があります。
要は、医療機関を受診しないと傷病手当金へ申請できません。そのため、精神障害の程度が重かったとしても医師の受診は重要になります。
退職後の継続給付は条件がある
なおケガとは異なり、メンタル不調はすぐに回復しにくいです。精神障害者では、回復まで何年もの時間を要する場合がよくあります。
そうしたとき、いまの会社を退職するのは一般的です。退職後であっても傷病手当金を得る条件は以下です。
- 社会保険に継続して1年以上を加入している
- 退職日に出勤していない
- 同じ傷病で継続して働けない
勤務日数が短くても、在職中の場合は傷病手当金を利用できます。ただ退職後も傷病手当金を利用したい場合、1年以上の社会保険の加入が必須になります。
また精神疾患を有していたも、引き継ぎを含めて退職日に出勤を依頼されるケースがあるかもしれません。ただ退職日に数時間であっても出勤すると、傷病手当金を受け取る権利を消失します。そのため、退職日に出勤してはいけません。
これらの条件を満たしたうえで、同じ精神疾患によって継続して働けない場合、退職後であっても傷病手当金を活用できます。
同じ病気の再発は合計で1年6か月まで
なお精神障害者では、時間経過によって症状に波が出るのは普通です。そうしたとき、いったんは症状が改善して働けるようになったとしても、再発することで働けなく場合があります。そうしたとき、傷病手当金の受給は可能なのでしょうか。
傷病手当金の受給期間は1年6か月です。そのため、「仕事に復帰していた期間」を除いて合計で1年6か月は傷病手当金の受給が可能です。
一方で既に1年6か月にわたって傷病手当金を受け取っている場合、再発によって仕事を休むことになっても傷病手当金の対象ではありません。
異なる傷病では新たに1年6か月まで受給可能
ただ、1年6か月まで受給可能というのは同じ傷病の場合です。異なる傷病であれば、新たに1年6か月にわたって受給可能です。
例えばメンタル不調によって仕事を休み、1年6か月の傷病手当金を受け取ったとします。その後、仕事に復帰したものの、大きなケガによって再び長期にわたって仕事を休む必要が出てきた場合、新たに傷病手当金を受け取れます。
精神疾患と大きなケガでは、完全に別の傷病です。この場合、以前に傷病手当金を1年6か月にわたって受け取っていたとしても、別の傷病として申請できます。
・違う傷病でも原因が同じだと微妙
なお、たとえ違う病名であっても原因が同じである場合、再び1年6か月の傷病手当金を利用するのは難しくなります。
例えば発達障害を原因としてうつ病を発症したとします。その後、症状が改善して復帰したものの、今度はストレスによってパニック障害を発症して働けなくなりました。この場合、原因が同じなので精神疾患の病名は違うものの、傷病手当金の受給が厳しくなるというわけです。
完治して期間が長い場合、同じ傷病でも受給可能
それでは、同じ病名の場合はどのような場合であっても再び傷病手当金を利用できないのでしょうか。これについて、相当期間が開いている場合の再発であれば1年6か月にわたって傷病手当金を再び利用できる可能性があります。
要は、たとえ同じ病気であったとしても、一度完治した後での再発であれば「新たな傷病」と考えることができるため、再び傷病手当金の申請が可能というわけです。
例えばうつ病によるメンタル不調で傷病手当金を1年6か月にわたって受給した後、仕事に復帰したとします。このとき、1年後の再発では完治とはいえず、傷病手当金の対象外です。一方で仕事復帰をした後、10年後に再発した場合、長い期間が開いているので傷病手当金を再び利用できる可能性があります。
ただ、非常に長い期間が開いている場合であっても、「復職後も通院を継続して行い、服薬が欠かせない状態だった」というケースでは、完治しているとはいえません。
通院も服薬も何もない状態で長い年月が経過しているならいいですが、通院や服薬が必要な状態では完治とはならず、再発しても傷病手当金の対象外になります。
メンタル不調で傷病手当金を活用する
うつ病や統合失調症、パニック障害などの精神疾患を発症する人はたくさんいます。たとえ仕事上のストレスが原因であっても、精神障害者になってしまった場合は傷病手当金へ申請することで生活費を確保できます。
そこで、たとえ精神疾患の症状が重くても医療機関を受診して初診日を作りましょう。そうしなければ、傷病手当金を利用できません。
またメンタル不調が回復して仕事復帰した後であっても、再発によって休職することがあります。この場合、合計して1年6か月までなら傷病手当金を受給できます。または、違う傷病であれば新たに1年6か月まで受給可能です。
うつ病や統合失調症、パニック障害を含め、さまざまな精神疾患で傷病手当金を利用できます。そこでメンタル不調によって仕事を休み、給料を得られない場合は傷病手当金へ申請しましょう。